<ご報告>
第4回GSDM国際シンポジウム
「イノベーション、宇宙開発及び政策」
2月8日(水) 13:30~17:30
(東京大学 伊藤国際学術研究センター 伊藤謝恩ホール)

2017/03/07

共通セッション 宇宙分野のイノベーションとそのガバナンス
-イントロダクション 城山 英明 (GSDMプログラムコーディネーター・東京大学法学政治学
           研究科 教授・公共政策大学院 教授)  ◉発表資料
-基調講演1     原山 優子 (内閣府 総合科学技術・イノベーション会議 常勤議員)

◉発表資料

-基調講演2     ハンス イエルク ブリンガー(フラウンホーファー研究機構評議員)

◉発表資料

  
セッション1 宇宙産業における技術革新とビジネスの潮流

◉司会(GSDMプログラム生):前半 岸野 美奈

【モデレーター】
   -光石 衛(GSDMプログラムコーディネーター代理・東京大学大学院工
        学系研究科 教授)
【パネリスト】
   -高田 修三(内閣府 宇宙開発戦略推進事務局長)  ◉発表資料
   -岩渕 泰晶(JAXA研究開発部門 システム技術ユニット プロジェクトコストマネジメント
         チームリーダー)  ◉発表資料
   -中村 友哉(株式会社アクセルスペース 代表取締役)
   -クリストファー ブラッカビー(NASA アジア担当代表)  ◉発表資料
   -ムクンド ラオ(国家高等研究所(NIAS)助教授)      ◉発表資料
   -GSDM プログラム生                   ◉発表資料
    ブダディッド パイン(工学系研究科電気系工学専攻 D2)
    ジュリオ コラル(工学系研究科航空宇宙工学専攻 M2)
    小林 芳成(工学系研究科航空宇宙工学専攻 D2)

  
ご報告(セッション1)
はじめに
「宇宙分野のイノベーションとそのガバナンス」を取り上げた共通セッションに続き、セッション1ではインド、日本、米国に焦点を当て、「宇宙産業における技術革新とビジネスの潮流」をテーマに議論した。モデレーターを務める光石衛教授がまず宇宙産業における「技術とビジネスイノベーションの世界的潮流」についてスピーチを行った。
パネル発表セッションの報告
セッション1は、学生パネリストたちが行う「航空宇宙におけるイノベーションの潮流:今後の展望と課題」をテーマとする短い発表から始まった。
ブダディッド・パイン氏「衛星の小型化によるインパクト」についての情報を共有した。その中で、将来的な宇宙ごみ清掃に関する国際的な規制枠組みの必要性を明らかにした。また、政府、宇宙機関、大学、民間企業など幅広いステークホルダーの間で効率的な国際協力が必要であることや、衛星データの共有と合成開口レーダー画像システムの潜在的使用を可能にして災害危機管理能力を高めることを目的に、現行の厳格な規制を緩和することについても説明した。
ジュリオ・コラル氏「推進工学の潮流とコスト削減戦略」について発表した。深宇宙探査の推進システムにおけるロケットの再利用可能性とデルタVニーズの重要性に焦点を当てた。
小林芳成氏「ニュースペース:航空宇宙産業の明確な転換」について発表した。Google X-PrizeやNASAの商業軌道輸送サービス(COTS)の契約が、いかにテクノロジープッシュをデマンドプルに変え、それによって宇宙産業の研究開発(R&D)に弾みがつき、波及効果が広がり、世界経済に利益がもたらされるかを明らかにした。また、開発コストが下がることで、発展途上国が宇宙技術のR&Dを利用しやすくなってきていることや、これに関連したクラウドファンディングの将来性についても指摘があった。
学生の発表に続いて、第一線のゲストパネリストによる発表が行われた。
はじめに高田修三氏「宇宙産業のイノベーションに果たす日本政府の役割」について発表した。同氏は、日本市場が主に政府部門のデマンドプルを基本としていることから、宇宙産業のパラダイムシフトという背景の中で宇宙利用のニーズを検討することが重要との見解を示した。その背景とはニュースペース分野への企業の参入であり、そこでは焦点は高額で大規模な衛星ミッションから、リアルタイムの地球観測やワンウェブ・グローバル・コミュニケーション・ネットワークという新たな可能性のもと、安価かつ小規模な衛星コンステレーションに移っているという。また、4機体制での準天頂衛星システム(QZSS 4)についても言及があった。準天頂衛星システムは日本政府主導の取り組みで、静止軌道(GEO)1機と準天頂軌道(QZO)3機が長期的に宇宙から日本を監視する。運用開始は2018年を予定している。
東京大学の同窓生でもある中村友哉氏「日本の宇宙産業における起業文化」について洞察に満ちた発表を行った。まず2008年に設立したアクセルスペース社の起業について詳細を説明し、次いでニュースペース分野が現在の宇宙産業にもたらした大きな変革について取り上げた。現在、小型衛星の開発に要する時間は従来の大型衛星の5分の1、コストは100分の1で済むという。同氏は宇宙関連企業の立ち上げに必要となる資金調達の重要性についても述べた。アクセルスペース社はシリーズAで日本の大手企業から19億ドル(2015年11月現在)を調達している。続いて同社が構築中の50機の衛星からなる地球観測網Axelglobeについて説明があった。このプロジェクトでは防災・減災、森林管理、エリアマーケティング、石油不足などの経済動向の監視にデータを応用する。2017年にまず3機の衛星を打ち上げ、2022年までに50機体制を完成させる予定である。このほか、日本の宇宙産業における将来的な官民パートナーシップの重要性についても言及し、2018年に打ち上げが予定されている革新的衛星技術実証プロジェクトについて紹介した。これはアクセルスペース社が政府機関の契約相手先として初めて宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で開発中のプロジェクトである。
ムクンド・ラオ博士「インドの宇宙分野に関する今後の技術革新とビジネスイノベーション」と題して発表を行い、宇宙分野やグローバル宇宙市場へのアクセスに対するインドでの需要の高まりについて述べた。インドの宇宙産業はこの10年間に目覚ましい進歩を見せており、それを象徴するのが2013年の火星探査計画(マンガルヤーン:火星の乗り物)の成功である。インド宇宙研究機関は、その信頼性が高く経済的な打ち上げシステム(どこよりも安い費用)によって世界各国との契約を増やしている。同氏はインド成功の要因として1970年代からみられる「インドの宇宙文化」に言及した上で、これからのニュースペース時代には、今後の宇宙技術とその応用に関するR&Dを大きく進展させる長期的な国家宇宙政策とともに、民間企業・国家宇宙機関・学術界の三者からなるインドの国家宇宙エコシステムが必要になると述べた。また、国家高等研究所と東京大学の間で進行中の共同研究にも触れ、日本とインド間の今後のスペース・コラボレーションについて論じた。
クリストファー・ブラッカビー氏「リモートセンシングに関する国際協力の課題と今後の機会」について発表した。NASAは、持続可能な開発目標の支援として122の国・2つの国際組織と698にのぼる国際協定を締結して国際協力を推進している。同氏は、衛星の開発・打ち上げ・地上局の利用、データの共有に関する二国間協力、多国間協力メカニズム(国際災害チャーター、センチネルアジア、地球観測に関する政府間会合、地球観測衛星委員会など)、国際協力と一般社会への働きかけを重視した外交努力が重要との見解を示した。また、宇宙産業における国際協力の強化を阻むものとして、国家安全保障上の懸念事項、データ配信に係る規則の世界的枠組みの欠如、一般社会の認識不足を挙げた。
セッション1の最後は、岩渕泰晶氏「今後の宇宙ミッションのコスト削減戦略」について発表を行った。まず、費用負担が極めて大きい宇宙探査機とその機器類の開発手順の特徴について概要を説明した。次に、日本政府と日本企業にみられるリスク忌避の体質を取り上げ、そのことが宇宙産業に参入する新興企業に必要なベンチャーキャピタルの不足をもたらしていると述べた。また、ニュースペース時代において日本は、NASAやESA(欧州宇宙機関)に倣って、自ら中小企業技術革新研究プログラムを実施して現行の政策フレームワークを改革し、競争が開発コストの削減につながることからも、宇宙産業の競争力向上のために参入企業を増やす必要があると述べた。
オープンディスカッションとディベートセッションの報告
発表セッションに続いて、オープンディスカッションとディベートが行われた。モデレーターを光石教授が務め、ゲストパネリストと学生が「ニュー・スペース時代の日本、米国、インドに期待する政策転換と規制改革」をテーマに討論した。
高田氏岩渕氏から、日本の政策転換は時間を要するものの、最近では政府内で認識が高まっていることや、改革がゆっくりではあるが着実に進行しつつあるとの意見がでた。中村氏がそれに加えて、アクセルスペース社のような日本の宇宙関連の新興企業が成功すると、周囲を勇気づけることとなり、リスク忌避の姿勢から徐々に脱却していくことになると述べた。JAXAとアクセルスペース社の連携に見られる官民パートナーシップは、日本政府が宇宙産業における歴史的な転換を後押ししていることの証である。
ブラッカビー氏は、小型衛星が増加していることを受け、NASAには地球低軌道衛星のコントロールから手を引き、数十億ドル規模の大型衛星プロジェクトを伴う静止軌道衛星のみに注力する考えがあると述べた。コラル氏が、NASAがコントロールから手を引くことによって国家安全保障の弱体化を招くおそれがないか質問したのに対し、ブラッカビー氏は、マスコミがよく誤解するところだが、コントロールから手を引くとは規制を撤廃するということではなく、それどころか1990年代に定めた規則や規制を改正することを意味し、国家の安全保障に悪影響を及ぼすことなく、今のニーズに従ってそれらを改正するものだと答えた。高田氏がこれに付け加えて、技術規制(レーダー画像解析度の取得や宇宙機器に関する制限など)の観点では、日本政府は厳格な武器国際取引に関する規則(ITAR)を実施している米国に比べ、規制が緩いと述べた。
ニュー・スペース時代のコスト削減戦略に関してラオ博士は、インドがすでに素晴らしい成果を挙げ、他国と比較してコスト効率が著しく高いことを踏まえ、一段のコスト削減はあまり現実的ではないとの見解を示した。高田氏ブラッカビー氏は、これまでに大幅なコスト削減が行われてきたものの、この業界でよく言われる「宇宙産業で一儲けしたいのなら、まず大富豪になることだ」というジョークはいまだ健在という点で意見が一致した。中村氏は日本の宇宙ミッションのコスト削減について、政府が宇宙産業への新規参入を促し、競争力が高まれば可能との明るい見通しを示した。一方、パイン氏は、大学・宇宙機関・宇宙産業のパートナーシップを推進すれば、インドを含め各国の宇宙ミッションの一層のコスト削減が可能であると述べた。また、学部生や大学院生は優れた資源でありながら十分に活用されておらず、宇宙産業のR&Dを促進する上で効率的かつ経済的な活用が可能であるとの見解を示した。その根拠として、大学院生は将来の進路に備えて自分の履歴書を説得力あるものにするために画期的な研究で優れた成果を挙げたいと考えていること、そのためには航空宇宙分野のR&Dに無報酬で貢献することも厭わないことを挙げ、ゆえにコストの大幅削減につながると述べた。ラオ博士はこの提言に賛同した上で、インドの場合、工学や自然科学の分野は特に理論的知識の習得に過度に力を入れ、実践的な研究をあまり重視しない傾向があるため、大学の教育システムを改革する必要があると付け加えた。以上をもってセッション1は終了した。
おわりに
本シンポジウムは大成功のうちに幕を閉じた。航空宇宙工学とシステムイノベーション分野の学生にとっては、宇宙産業や政府部門の専門家と交流し、自分の専門研究以外で現在起きている課題について認識を深める素晴らしい場となった。また、第一線のゲストパネリストの方々にとっても、既存のビジネスや政策に対する学生の考え方や懸念事項を知る良い機会となった。

  
セッション2 技術イノベーションと政策の相互作用

◉司会(GSDMプログラム生):後半 柴田 莉沙

【モデレーター】
   -城山 英明
【パネリスト】
   -中須賀 真一(東京大学大学院工学系研究科 教授)
   -原山 優子
   -ハンス イエルク ブリンガー        ◉発表資料
   -バヴィヤ ラル(防衛分析研究所 研究員)    ◉発表資料
   -浜辺 哲也(株式会社産業革新機構 専務取締役) ◉発表資料
   -GSDM プログラム生             ◉発表資料
    マークアンドレ シャビマクドナルド(工学系研究科システム創成学専攻 D2)
    カリティケヤン ガウタム(工学系研究科航空宇宙工学専攻 D2)
    カンタン ヴェルスピレン(工学系研究科航空宇宙工学専攻 M2)