<ご報告>
デニ・ムクウェゲ医師講演会:「コンゴ東部における性暴力と紛争」
第1部:10月3日14:00~16:00 (笹川平和財団国際会議場)

2016/10/27
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  • 第1部:紛争下における性暴力と女性の権利擁護
     
    日 時:2016年10月3日(月)14:00~16:00
    場 所:笹川平和財団ビル 11階国際会議場
     
    開会挨拶
    石弘之 笹川平和財団参与
     過去の世界大戦およびその後の各地での内戦においても性暴力の問題は起こり続け、常に女性は犠牲になり続けてきた。しかしその一方で、国の安定度、経済発展などにおいて女性の役割が極めて重要であることもまた認識されるようになって久しい。こうした状況を踏まえ、これからの国際社会におけるジェンダーの在り方を考える場にこの講演会がなれば、と望んでいる。

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    主旨説明
    米川正子 立教大学特任准教授
     コンゴの紛争下における性暴力の問題は、鉱物資源の採掘という経済活動を通して我々日本人の生活とも密接につながっている。今年はコンゴ紛争発生から20年という節目の年であり、このタイミングでコンゴの紛争について、日本にいる私たちが振り返る機会を持ちたいと考えたのが医師を招いた目的である。今日は医師の話から、なぜこの20年間コンゴ国民が性的テロリズムに苦しんでこなければならなかったかをみなさんと共に考えたい。

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    基調講演 「紛争下における性暴力と女性の権利擁護」
    デニ・ムクウェゲ医師
     多国籍企業が利益を得るための紛争資源問題が、性的テロリズムを引き起こしている。これを是正すべきであることを伝えたい。タンタルがとれるところで、女性が多く犠牲になっている。そしてこの鉱物は、携帯、ミサイル、飛行機などに利用されている。ポケットの中に、我々の持つ携帯電話の中にコンゴの女性の受けている性暴力があるのだ。そして資金提供、税の投入などの形で国家、企業もそれに加担している。コンゴの紛争は民族紛争ではない。内戦でも、宗教戦争でも、テロでもない。コンゴの紛争は、経済的な紛争なのである。そしてそのいちばんの犠牲者は、女性であり、子どもたちである。
     性暴力はコストの安い紛争の武器として使われている。私が病院で診察をしていると80%の女性はどこの武装勢力によって強姦されたのかがわかる。武装勢力ごとに性器に傷を与える方法が確立されているからだ。男性もまた被害にあっている。集団の性暴力で一度に200-300人の女性が被害にあい、村全体の女性が対象となる場合もある。村人の見ている前で強姦し、女性を「壊す」ことで、周りに残忍さを見せつけることで、コミュニティに致命的な影響を与えることを意図している。生後6か月の赤ちゃんから80歳の老人までの女性が性暴力の対象になっている。銃で性器を打つ、性器の中に武器を差し込むなどの残忍な暴力を働く。そして性暴力はまた、性病を拡散もする。HIVウィルスも拡散する。人口を減らすだけでなく、女性が支える経済全体に対し、世代を超えて病気を拡散することで大きな悪影響を与える。暴力は社会的組織も壊す。母が強姦されたのを見た子ども、子が強姦されたのを見た親はその関係性が分断される。強姦で生まれた子どもは「蛇の子ども」と呼ばれ、家族、コミュニティの誰も面倒を見ず、社会とのつながりが断たれてしまう。このように性暴力は極めて効率の良い兵器なのである。コンゴは「開発の大きなパラドクス」の国家と言われ、豊かな天然鉱物に恵まれているにもかかわらず最貧国から抜け出せない。性暴力犠牲者たちはそのことで家族、社会からも疎んじられてしまう。
     国際社会はこうした状況を断ち切るため行動すべきだ。武装勢力に対する資金供与をやめさせる。鉱山で頻繁にみられる人権侵害をなくす。鉱物のトレーサビリティを向上させる。こうした問題を解決しない限り、いかなる企業の自由経済活動も認められてはならないだろう。遠くの地域であっても連携してこの課題に挑まなければならない。欧米の法律を見本にして、こうした世論に訴えるキャンペーンを支援してもらいたい。笹川平和財団も、それに貢献してほしい。住民の人権、社会の厚生、利他主義、といったものが、企業利益よりも優先されなければならない。企業は人権の敵ではなく友人、パートナーであるはずだ。パートナーとしての企業への投資により持続的開発も可能になるだろう。幸せ、豊かさとは、共有する事であり、それが、地球というグローバルビレッジの幸せにもつながるであろう。

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    コメント
    秋林こずえ 同志社大学大学院教授開会挨拶
     紛争下で性暴力が武器として利用されるようになったという認識は長い時間をかけて形成されてきた。そして人間の安全保障の中心的課題として扱われるようになったが、その裏には国連、市民社会、フェミニズム運動の貢献があった。様々なNGOが現在も、女性の人権確保、地位向上のため活動を行っている。

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    パネルトーク
    パネリスト
    デニ・ムクウェゲ医師
    米川正子 立教大学特任准教授
    秋林こずえ 同志社大学大学院教授
     
    モデレーター
    小木曽麻里 笹川平和財団国際事業企画部部長
     
     パネルトークではコンゴ、あるいは日本を含む国際社会において女性の地位が向上しジェンダー不平等が是正されるための方策について意見が交わされた。ムクヴェゲ医師は「交渉の場に女性がなかなか出ていけないが、紛争で最も被害を受けるのは女性である」とし、もっと交渉の場に女性が出ていくことが必要と語った。米川氏や秋林氏は、国会議員の数といった量的指標のみに注目するのではなくより本質的に女性が社会に果たす実行力を向上させていくことが重要だと指摘した。

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    質疑応答
     質疑応答では「先日開催されたアフリカ開発会議(TICAD)では人権等のイシューは提起されなかった。日本の政治経済的リーダーたちに、ムクヴェゲ医師からメッセージはあるか」「コンゴの問題に何か自分も働きかけたいが、日本にいながらできることはあるのか」「女性のリーダーが将来より増えていくために何が必要か」などの議論が活発に行われた。ムクヴェゲ医師からは、日本政府はTICADでも鉱物資源を含むビジネスの話をメインにしたが、ビジネスだけでなく人権もグローバル化し、普遍化して両輪として進めていかないことには健全な発展はないこと、などの見解が示された。また女性の社会進出に関し、「女性の力は悲劇の中で真価を発揮する。悲劇を直視する力がある。大学での成績が良いのも女性。女性が管理する銀行が繁栄するという統計もある。これはリップサービスではなく現実である。女性が真価を発揮し、女性として権利を行使することが必要。女性が何かすると男性よりうまくいく、と言われる。50ドルを男性に与えても何にもならないが、女性に与えれば1軒の家にする。女性参加の促進が極めて重要である。」と語った。
     

    (報告者:東京大学農学生命科学研究科 D2 杉本あおい)