総長挨拶

東京大学総長/五神 真
東京大学総長
五神 真

グローバル化が加速する中で、数多くの社会的課題が顕在化しています。これらの地球規模の課題に対処するためには、多様な人々が知恵を出し合い、それを活用し、連携協力して行動をおこすことが必要です。課題解決の過程は、誰もがより快適に安心して生活できる社会の姿を生み出していくための好機でもあります。新しい世界をデザインし、それに至る道筋を提示する人材を育成することは、東京大学の最重要な責務の一つです。このため、私達は立ち止まることなく、勇気と英知と責任感とを持って挑戦し続けていかなければなりません。

こうした「知のプロフェッショナル」を育成する原動力となるものは、言うまでもなく、世界的に卓越した学問です。東京大学は、世界的な水準で学問研究をリードすると同時に、世界的視野を持ち、課題解決を担うことができる「知のプロフェッショナル」を生み出す場として全力を尽くす責任があると考えます。大学院では、世界最高水準の専門と実践の知を獲得するための教育を行い、そのために、海外体験・異文化体験を通じ、コミュニケーション能力や行動力を身に着けさせ、また優れた人材が世界から東京大学へ集い、東京大学からも外に向けて飛び出すという環境を整えます。大学院生への研究支援をより充実させ、国際的な活躍の場をさらに拡大することにより、世界最高水準の人材を育てることを目標としています。東京大学は、博士課程教育リーディングプログラムを、この目標を達成するための重点的事業と位置づけています。国内外のトップクラスの教員と学生を集め、産学官の参画を得つつ、国際機関等との協力をさらに深め、最高学府にふさわしい大学院の形成を推進します。そのためにプログラムのマネジメントと組織的支援を行う体制を総長主導で整備しました。

東京大学大学院博士課程教育リーディングプログラム(「社会構想マネジメントを先導するグローバルリーダー養成プログラム」略称GSDM: Global Leader Program for Social Design and Management)は、平成25年度に東京大学が提案をしたプログラムの一つで、オールラウンド型(オールラウンドリーダー養成)として採択されました。GSDMは、高い倫理観のもとに、社会が直面するグローバルレベルの課題を的確かつ早期に捉え、これに対して、科学技術や社会制度・政策に関する多様な専門知識を統合し、社会的リソースを組織化して解決に導くことができるとともに卓越したコミュニケーション能力を備えたリーダー人材(近い将来、「世界や国のドライバーズシート」を託せる高度博士人材)を養成することを目的としています。

GSDMでは、本人の選択により専門分野の知識基盤を一つ以上しっかりと身に着けさせつつ、横断的知識の統合、統合された知識に基づく社会システム設計、グローバルな場における課題解決の実践等の能力を養う機会を重視しており、優秀な教員と恵まれた研究環境の中で、リーダーとしての出口を意識した育成プログラムを組んでいます。このような活動をとおして、豊かな構想力を備えた「知の協創の世界拠点」として、更なる発展を図っていく決意です。皆様方には、東京大学の教育と学術研究の活動にいっそうのご理解とご支援を賜りますよう、この機に改めてお願い申し上げます。