<発表資料掲載>
第92回GSDMプラットフォームセミナー
「コンゴの危機、再び~1960年代と現在の国連の役割と課題を問う~」
7月30日(日)14:00~16:30
(東京大学 本郷キャンパス工学部2号館213講義室)

2017/08/07

【日時】 2017年7月30日(日)14:00~16:30
【会場】 東京大学本郷キャンパス工学部2号館213講義室
【登壇者】 講演:三須拓也(東北学院大学 教授)
開会挨拶:華井和代(東京大学公共政策大学院 特任助教)
主旨説明:米川正子(立教大学 特定課題研究員)
コメント:ジャン=クロード・マスワナ(筑波大学 准教授)
【企画概要】 1999年以降、コンゴには世界最大級の国連PKOが展開し、文民に対する暴力の低減、国家制度の設立と安定化を目的とする活動を行っている。しかし、コンゴ東部では武装勢力の活動が続き、さらに、2016年には南東部や南部に暴力が拡大して92万人の新たな国内避難民が発生した。
世界最大級のPKOが展開しているにもかかわらず、なぜ不安定な状況が続くのか。それを理解するためには、1960年のコンゴ動乱に際して派遣された国連軍(ONUC)をめぐって何が起きたのか、コンゴに対する国連の介入の歴史を理解する必要がある。本セミナーでは、三須拓也東北学院大学教授を講師に招き、コンゴの歴史を振り返りながら、PKOがコンゴにおける紛争解決と平和構築に果たしてきた役割と課題を検討する。
【開催報告】 本セミナーには、大学、援助機関、企業、メディア、一般市民から54名が参加した。
開会挨拶
開会に際して華井和代東京大学特任助教は、本シリーズセミナーの主旨と、昨年度に開催した一連のイベント(ムクウェゲ医師の来日講演会、ドキュメンタリー映画の上映会等)の概要を紹介した。そして、今年度のセミナーの方向性として、紛争鉱物取引規制の効果を検討すると同時に、コンゴの歴史など根本的な部分についてさらなる理解を深める機会を提供していくと述べた。
主旨説明
「コンゴの性暴力と紛争を考える会」の代表である米川正子立教大学特定課題研究員は、昨年に同会を立ち上げた目的と今年度の活動予定について説明したうえで、本セミナーの開催に至った経緯とコンゴの現状について述べた。
2016年以降のコンゴでは、20年以上紛争状態が続く東部だけでなく、南部でも暴力が拡大し、国の独立後に国連PKO(ONUC)が派遣された1960年代と同様の危機が発生している。

これまでONUCに関する検証や研究が不十分であり、また国連PKOに関する日本国内での議論が非常に限定的であることから、国連PKOの根本的な問題を見直す必要性を痛感した。コンゴ南部での暴力の他に、昨年末から延期され続けているコンゴの大統領選挙や、コンゴで調査していた国連専門家の殺害といった問題を説明し、また、ムクウェゲ医師の近況を伝えた。

講演
三須拓也東北学院大学教授により、「コンゴの動乱とコンゴ国連軍(ONUC)」というテーマでの講演が行われた。コンゴがベルギー国王レオポルド2世の私的所有地として支配された1885年から、1908年にベルギー植民地となり、1960年に独立すると同時にコンゴ動乱に突入するまでの歴史を辿り、国連や大国の政治的思惑の狭間で翻弄され続けたコンゴの実情に迫った。

 特に独立直後のコンゴ動乱期に焦点が当て、国内で起きた分離独立運動や初代首相ルムンバの失脚を目的としたクーデター等に国連やベルギー、米国、英国等がどのように関わり、その結果、どれほどコンゴ社会の混乱が深まっていったかということが詳細に語られた。そして、ONUC派遣の根底には当時の国連事務総長の「防止外交」成就の野心があったことや、ONUCの活動が必ずしも現地住民の保護を第一としていなかったことなど、本事例を通じてPKOの在り方に問題を提起した。
 コンゴ動乱とはアメリカと国連の協働介入であり、国連は干渉者に他ならなかったこと、そして、コンゴに介入する上で必要な資金等の資源の確保にあたり、国連の米国依存が深まったこと、さらにはコンゴ動乱へのPKO派遣は国連による介入の現実的な可能性と限界を示す実例であるとまとめた。

コメント
ジャン=クロード・マスワナ筑波大学准教授より、なぜコンゴで不安定な状況か続くのか、という問いへの見解が、コンゴ人の視点から語られた。特に、コンゴで展開されてきたPKOが本来の役目である平和維持を果たせていないこと、コンゴでは不正なことが当たり前の状態になっていること、そして最後に、この国連PKOを変えるために一般市民による問題の理解と声を上げる重要性が強調された。

質疑応答
参加者からは、2010年にアメリカで制定された紛争鉱物取引規制にあたるドッド・フランク法1502条の成立背景とその効果に関する質問から、「カタンガの分離独立の際、コンゴの統一にこだわらずにカタンガの独立を認めた方が治安が安定したのではないか」、「現政権に問題があると考えて打倒しても、もっといい政権が現れるとは限らないのではないか」、といった政治に関する質問までが活発に出された。
ドッド・フランク法1502条について、三須教授からは、紛争鉱物取引規制を利用した受益者がいることが指摘され、マスワナ准教授からは、コンゴの現地では規制によって家計収入の減少など、性暴力とは別の問題が発生していることが示された。一方で華井特任助教は、規制の導入を契機として現地で原産地認証制度が作られたり、NGOや企業が支援に入る余地が広がり、副次的な効果は出ているという見解を示した。そして、米川特定課題研究員より、現大統領の進退についてはコンゴ人が決めることであるが、今までより良い政権が作られねばならないと話された。最後に、コンゴ人参加者から寄せられた「長年様々な国から影響を受け続けてきたコンゴは一体誰のものなのか」という大きな問題提起に対して、華井特任助教は、コンゴが世界経済の構造の中に位置づけられている以上、コンゴの問題は、コンゴ人自身の問題であると同時に、私たちの問題でもある。共に考えていくことが必要であると述べた。

   

(報告者:国際基督教大学大学院 修士2年 村松智妃呂)