<ご報告>
第83回GSDMプラットフォームセミナー
「コンゴの紛争資源問題から考えるビジネスと人権」
フォローアップ・セミナー
2月27日(月)18:30~20:30 (本郷キャンパス工学部2号館213講義室)
【来場者】96名
【日時】2月27日(月)18:30~20:30
【会場】東京大学本郷キャンパス工学部2号館213講義室
【登壇者】
<パネリスト>
田中滋 アジア太平洋資料センター理事
永木みのり 法政大学大学院学生/NPO難民支援協会インターン
中野寛 朝日新聞国際報道部記者
根本かおる 国連広報センター所長
ジャン=クロード・マスワナ 筑波大学准教授
森口雄太 神戸市外国語大学学生/NPO開発メディア記者
山崎昌宏 電子情報技術産業協会(JEITA)国際部国際グループ長
<総括コメント>
キハラハント愛 東京大学大学院総合文化研究科准教授
<モデレーター>
華井和代 東京大学公共政策大学院特任助教
米川正子 立教大学 特任准教授/コンゴの性暴力と紛争を考える会代表
<司会>
増田明之 東京大学大学院工学系研究科D2(GSDM生)
【開催概要】
GSDMは2016年度に、コンゴ民主共和国(コンゴ)東部の資源産出地域における人権侵害の実態と、当該資源を利用する先進国の企業が果たすべき社会的責任を考えるセミナー・講演会を開催した。9月21日には、コンゴ東部で医療活動に取り組むデ二・ムクウェゲ医師の活動を描いたドキュメンタリー映画『女を修理する男』(2015年ベルギー制作)を上映し、紛争手段としての性暴力の実態を理解した上で、日本企業による紛争鉱物調達調査の現状をとらえた。10月4日には、ムクウェゲ医師を日本に招聘して講演会を開催し、講演会自体のみならずメディアでの情報公開を通じて、日本社会に問題を提起した。2月27日のフォローアップ・セミナーでは、これらの上映会・講演会の成果として、ビジネス界、アカデミア、メディアにおいてどのような認識変化が生じたのか、各界からパネリストを招いて検証し、今後の展望を議論した。
【報告】
④パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、トランプ大統領就任の影響や、コンゴと日本の協力はこれからどうあるべきか、自分たちには何ができるのかについて議論が行われた。
トランプ大統領就任に関しては、国連を中心とした多国間主義そのものが脅威にさらされつつあり、国連の意義が試されることになる。女性保護という観点からは、難民の過半数は女性であり、アメリカが果たしてきた役割は大きく、今後もその重要性を訴えていく必要がある。紛争鉱物問題に関しては、ドッド・フランク法1502条が廃止されたとしても、すぐに紛争鉱物が取引されるようにはならないだろう。しかし、それに代わる規則は必要であり、紛争鉱物の責任を企業に求めるべきだという考え方が社会に広く認知されるかどうかが重要である。現在はその瀬戸際にあり、法律の廃止はこの点に影響を及ぼしうる。コンゴと日本の協力については、研究者間、市民社会間の連携の必要性が議論された。コンゴの紛争地域における政治研究者は少ないが、援助には正しい知識が必要であり、研究していくことが重要である。
⑤質疑応答
質疑応答では、「紛争鉱物規制がなぜ女性暴力の解決に役立つのか」「政府も加害者だとすると、その行為を止める活動は内政干渉ではないか」「経済制裁で平和構築はできるのか」「日本ではFairphoneのような動きはあるのか」「問題の核心は欧米諸国の植民地支配や多国籍企業ではないのか」「被害者の声はどう生かされているのか」「経済合理性の観点からの取り締まりを訴えることは可能か」「テレビという、情報量は限られているが大多数の人に強い印象を与え、きっかけ作りができるメディアで、次に伝えていくべきことは何か」といった質問に対して活発な議論が交わされた。
最後に、マスワナ氏から、問題解決のためにコンゴ人は日々闘っており、必要なのは外部からの支援であるという点が強調された。また、コンゴ市民と寄り添った活動をしていくべきであるという意見に対して、森口氏からは、信頼できる援助機関への支援、意志あるお金の流れを作り出すことが重要であると語られた。
セミナーには、援助機関、NGO、企業、報道機関、一般市民、学生が計96名参加した。
(報告:東京大学大学院新領域創成科学研究科M1 荒木理奈)