<ご報告>
第75 回GSDMプラットフォームセミナー
「女を修理する男」上映会+「コンゴの紛争資源問題からとらえるビジネスと人権」講演会
9月21日 18:00~21:00 (東京大学駒場キャンパス 18号館ホール)

2016/10/24
【来場者】 174名
【日 時】 9月21日(水)18:00~21:00
【会 場】 東京大学駒場キャンパス18号館ホール
【講演者】 上田 肇(京セラ SCMリスク管理課責任者)
田中 滋(アジア太平洋資料センター:PARC)
根本かおる(国連広報センター所長)
藤田順三(外務省TICAD大使)
山崎昌宏(電子情報技術産業協会:JEITA)
【司 会】 華井和代(東京大学公共政策大学院 特任助教)

【開催概要】
9月21日、第75回GSDMプラットフォームセミナー「女を修理する男」上映会・「コンゴの紛争資源問題からとらえるビジネスと人権」講演会が行われた。
本セミナーでは、コンゴの紛争資源問題を事例として、資源産出地域における人権侵害の実態と、当該資源を利用する先進国の企業が果たすべき社会的責任の関係について考える。議論の題材として、コンゴ東部で医療活動に取り組むデ二・ムクウェゲ医師の活動を描いたドキュメンタリー映画『女を修理する男』(2015年ベルギー制作)を上映し、資源産出地域で起きている紛争手段としての性暴力と資源利用の実態を理解する。その上で、コンゴ東部の鉱山を現地調査したアジア太平洋資料センターの田中氏と、日本で紛争鉱物問題に取り組むJEITA責任ある鉱物調達検討会の京セラ上田氏および事務局の山崎氏が講演を行い、日本の企業が社会的責任を果たすべく尽力する実態をとらえ、今後の日本社会が取るべき方向性について議論する。
 
 
【報 告】

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開会挨拶
9月21日は国際平和デーであり、開会に際して根本かおる国連広報センター所長からは、国際平和を目標の一部とする国連SDGsに触れ、コンゴの紛争解決を願う言葉が伝えられた。

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藤田順三外務省アフリカ開発会議(TICAD)担当大使からは、自身のアフリカ駐在経験を踏まえて、コンゴの紛争問題を議論することの重要性が語られた。

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映画上映
コンゴ東部で医療活動に取り組むデ二・ムクウェゲ医師の活動を描いたドキュメンタリー映画『女を修理する男』(2015年ベルギー制作)を上映し、紛争下での性暴力とその救済について理解を深めた。
 

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各講演者の話
講演会では3人の講師からコンゴを含めた紛争資源問題に対する国際社会の取り組みが語られた。
田中滋アジア太平洋資料センター(PARC)理事の講演では、近年、コンゴ東部の鉱山における武装勢力による支配が、コンゴ国軍による支配へと変化している状況が紹介された。また武装勢力を利すると言われる紛争鉱物を使わないだけでなく、サプライチェーン(SC)の透明性の確保が重要であることが強調された。

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電子情報技術産業協会(JEITA)の山崎昌弘氏からは効果的なサプライチェーン管理のための手法と取り組みが紹介され、産業界で幅広くconflict freeが目指されている現状が伝えられた。

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京セラSCMリスク管理責任者の上田肇氏からは、京セラにおけるサプライチェーン管理の取り組みが紹介され、紛争鉱物を含まないサプライチェーンの確保が産業界におけるスタンダードになっていると伝えられた。

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質疑応答
講師と参加者の質疑では忌憚ない映画感想や、映画で語られなかったコンゴを取り巻く状況について活発な議論が交わされた。映画の感想としてはコンゴ鉱山における搾取の様子や、映画中で多く語られなかった政府の働きが話題に上り、現地調査を行った田中滋氏よりコンゴ国軍の腐敗や映画制作に携わったベルギーの働き等について示唆が与えられた。また企業における紛争資源に対する意識についての質問に対して山崎氏より企業の立場からの見解が述べられた。
閉会に際して、本セミナーの共催である東京大学総合文化研究科佐藤安信教授からは、ビジネスにおける人権デューディリジェンスが重視されるようになっている国際的な潮流が語られ、私たち一人ひとりが自分にできることを考える大切さが強調された。
 

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セミナーには、援助機関、NGO、企業、報道機関、学生が計174参加し、コンゴの紛争問題を考える貴重な機会となった。

       (報告者:工学系研究科 修士2年 竹内魁 & 公共政策大学院 特任助教 華井和代)