<ご報告>
第89回プラットフォームセミナー
「アジアの経済発展と金融安定」
5月8日(月)14:00~16:30 (東京大学本郷キャンパス ダイワユビキタス学術研究館 ダイワハウス石橋信夫記念ホール)

2017/05/18

日 時 : 2017年5月8日(月)14:00~16:30
場 所 : 東京大学本郷キャンパス ダイワユビキタス学術研究館
ダイワハウス石橋信夫記念ホール MAP
言 語 : 英 語
主 催 : 東京大学 Global Leader Program for Social Design and Management (GSDM)
共 催 : ASEAN+3 Macroeconomic Research Office (AMRO)
Graduate School of Public Policy (GraSPP)
参加費 : 無料

 

 

プログラム  
14:00~14:10 Opening remarks by Prof. Hideaki Shiroyama, GSDM Coordinator
14:10~15:00 Keynote speech by Dr. Junhong Chang, Director, AMRO 発表資料
15:00~15:45 Panel discussion by Dr. Junhong Chang, Dr. Yoichi Nemoto, and Dr. Peter Morgan, moderated by Prof. Masahiro Kawai
15:45~16:20 Q&As
16:20 Closing remarks

ポスターはこちらです

 
【開催報告】
冒頭に、城山英明GSDMコーディネーター・公共政策大学院教授からオープニング・リマークがあった。GSDMプログラムでは、PhD取得に向けた専門分野での研究を深めるだけでなく、実際の政策課題にも積極的に取り組むことをプログラム生に課しており、本日のAMROをめぐるセミナーは後者に貢献するものだという認識が示された。
次いで、AMROのJunhong Chang所長からキーノートスピーチがあった。まずCMIが2000年に導入され、AMROが2011年に設立された経緯や背景と、その後の発展(CMIのマルチ化、AMROの国際機関化等)が説明された。次いで、アジア金融危機後のASEAN+3経済の概観・展望が、成長率の変化、域内経済統合の変貌、資本流入の変化とともに示された。さらに、地域金融セーフティーネットとしてのCMIMの意義が強調される(IMF融資のみでは不十分、外貨準備の役割にも限界)一方で、その課題も指摘された(融資額、情報へのアクセス、分析能力の不十分さ)。CMIMとAMROが統合されていない現状で、いかにサーベイランスとCMIMを有機的に結びつけていくかがもう一つの課題だとされた。最後に今後の方向として、サーベイランス能力を高めること、危機予防時や危機時に効果的に対応すること、他のグローバルなセーフティーネット(IMF、二国間通貨スワップ協定、各国の外貨準備)とうまく協調していくことの重要性が強調された。
それに続き、根本洋一財務総合政策研究所長(前AMRO所長)とPeter Morgan ADBIシニアコンサルティングエコノミストを交え、パネルディスカッションを行った。根本氏からは、世界金融危機後に地域的なセーフティーネットの役割が重要になった背景として、世界金融危機後の市場の不安定な状況が継続していたこと、2010年に決められたIMFの増資が16年まで実現されなかったこと、欧州の金融危機でESM(欧州安定化メカニズム)の創設など地域的セーフティーネットの整備への認識が高まったことが挙げられるとした。また、AMROが国際機関になる前はサーベイランスレポートなどを公表することが困難だったが、国際機関設立協定の作成にあたり、公表ルールについてあらかじめ全ての加盟国・地域の当局の了解をとった上で、そのルールに従いAMROの責任で公表するよう仕組みを変えたことから、レポートの公表がより容易になったことが指摘された。また、Morgan氏からは、ASEAN+3の各国はアジア金融危機の経験からIMF融資を受けることに大きな抵抗を感じており(IMF stigma)、そのことがIMFリンクの強いCMIの利用を阻んでいること、IMFに比べAMROのスタッフ数は小さく(IMFは1,000人以上のプロフェッショナルスタッフを抱えているが、AMROは50人程度)サーベイランス能力に限界があり、かつCMIMを発動する際にはIMFとの情報共有や融資条件の策定など様々な協調が必要になるがそれは難しい、などの点が指摘された。モデレーターの河合正弘公共政策大学院特任教授からは、AMROの課題である融資額、情報アクセス、分析能力の不十分さにはどのように対応しようとしているのか、日本と中国の金融当局はCMIMやAMROを通じて両国間が政治的に困難な時期(2012-13年)にも協調してきたが、そこからどのような教訓を得られるか、などの質問があった。また、フロアからも活発な質問やコメントが出された。
これらの質問・コメントに対して、Chang所長は、AMROの優位な点として、サーベイランスで対外的な側面(資本移動など)と金融的な側面に焦点を当てていること、リスクの特定化に務めていること、CMIMの発動の可能性を常に念頭においていること、が挙げられるとした。融資額の不十分さに応える方法としては、融資額の規模を増やすこと(各国通貨建ての融資を行うことも考えられる)、IMFディリンク部分を引き上げること、などが挙げられた。根本氏からは、情報アクセスについては、2016年のAMRO設立協定の発効により各国はIMFに対するのと同じ情報を提供する義務が課されたので、法的には不十分さはないことが指摘された。日中協力の教訓としては、あらゆるレベルで危機感と問題意識を共有するとともに相互信頼の醸成が重要だという点が指摘された。